自動車メーカーに入社、夢への前進
ニワカゲームス(eM福岡の旧称)の1期生としてクラブに加入し、丸5年となった龍翔太郎(りゅうしょうたろう)君。
「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKI」少年の部での準優勝を皮切りに、気づけばeモータースポーツ界ではすっかり有名人となっています。
当初から自動車に関する仕事に就きたいという強い願望を持ち、自動車の開発ドライバーという夢を持っていた龍君。晴れてマツダ本社のデザイン部門に入社しました。
当クラブから自動車関連企業に入ったメンバーは初めてということで、就職に向けて行ってきたことを中心にインタビューしました。
マツダファンから就職へ
■マツダの方と初めて接したのはグランツーリスモ(以下、GT)の大会がきっかけ?
龍:2018年にグランツーリスモSPORTのワールドツアー・リージョンファイナルのエキシビジョンとして開催された「真剣勝負・メーカー対抗戦」でチームを組んだときが初めてですね。
■そのときマツダを選んでいた理由は?
龍:もともと僕がマツダ車が好きで、父が乗ってたんですよ。マツダが好きになったきっかけがロードスター(2015年式4代目)で、2015年にモーターショーのパンフレットで見たときに色とかデザインに衝撃を受けて。これ将来的に乗ってみたいなと思いました。
■今乗っているロードスターは?
龍:これは前の型のやつですね。(2015年モデルは)さすがに学生が買える金額じゃなかったです。
■次は4代目(2015年式)を買う?
龍:本音を言うと、これを維持するか、4代目を買うか、新作を買うかの3択ですね。
■大会でマツダチームを組んだのは就職に影響した?
龍:実際にマツダ関係者と関わったのが大きいと思います。そこでマツダというメーカーの空気感というか、車に対する考え方とか、マツダファンフェスタとかに行ったときの印象が良かったというのもあります。もともと好きだったのもあり、そのときの印象が決定づけたと思います。
あえて独学でデザイン部門へ
■進路をいくつか悩んでいたようだったが?
龍:まず将来の目標として開発ドライバーというのはずっとあったんですけど、なかなかなれる職業じゃないっていうのと、技術的なところも含めて実際難しいというのもあって。最終目標を開発ドライバー、車の運転に関われる仕事としたときに、設計開発かデザイン部門を狙おうと決めました。
設計開発は学校で学んできてたことなんですよ。就職先とかは学校の求人にもあって。ただ僕がデザイン関係に挑戦してみたときに、なんか自分に向いている感じがあって。それがきっかけでデザインも頑張ればできるかもしれないと思って、ほとんど独学ですね。9割8分。
■デザイン部門の仕事を具体的に
龍:カーモデラーっていう仕事なんですけど、やっててすごい楽しいというのと、車の知識を活かせるのと、デザイン関係の血筋というか、感覚的にできるものがあったので。やりたいという気持ちで一心にやってきましたね。
■血筋というと?
龍:両親は関係ないんですけど、親戚に画家がいたりとか、アンパンマンのアニメスタジオに勤めている方もいるんですよ。幼稚園や学生時代も、美術の作品が表彰されたりとかもよくありました。
■デザイン部門を意識し始めたのはいつ頃?
龍:(コロナの影響で)1年休学してたので、2年目から日産のインターンシップが来てるらしいという話があって、車の造形に関われる仕事(カーモデラー)があると知ったのがきっかけですね。車のデザインに一番力を入れていると感じたのがマツダでした。
高2からマツダに入りたいという気持ちがずっとあったんですけど、そこで目指している開発ドライバーとはちょっと違う軸で話が進んだ感じですね。開発ドライバー以外にも車に深く関わっていける仕事があるんだと知りました。
■開発ドライバー自体は諦めていない?
龍:ドライビングに関わる仕事というのは、目標にはあります。ただ、車のモデラーという仕事もできる限り追及してきたいです。ドライビングもデザインもできるマルチタスクな人間になりたい。
デザインの勉強にも大いに役立ったゲーム
■デザイナーに必要な技術・資格はある?
龍:まずかっこいいとか、美しいとか面白いとか、人間が感じる感性が鋭くないとできない仕事かなと思います。資格は特にないんですけど、CADでCGを作る必要があります。アナログでできるものをデジタルで作らないといけない。簡単にいうと空間認識能力が必要になります。
■ゲームの世界も空間認識能力が必要ですね
龍:ゲームも知らないところで良い影響を与えていると思います。まるで違うジャンルですけど、似て通ずるものはあると思います。
■デザイン部門にも入社前にテストがある?
龍:僕が決まったきっかけがインターンシップですね。基本的にはどのメーカーもインターンシップを開催するんですけど、これが入社試験になっていて、お題を基に資料を作ってプレゼンしないといけません。僕もクレイモデルっていって粘土を削って作品をプレゼンしました。デザインに込めた想いとか、狙いとかをプレゼンします。
インターンシップに呼ばれるまでにもポートフォリオを提出して、そもそも呼ばれないとスタートラインに立てないっていう、厳しい世界でもありました。
■勉強していて大変だったこと
龍:勉強っていうか感覚的なものなので、自分の感性を大事に、絵とかは色々描いたりして。
一番難しいと感じたのはCADの扱い方とか。エイリアスっていう名前なんですけど、基本的に英語なので、操作方法とかも応用・発展は全然わからなかったので、YouTubeとか海外のサイトを漁ったりしたのは大変でした。
やっと車一台作れるようになったときにインターンシップに呼ばれて、他の人からいろいろなやり方を教えてもらいました。それから自分の考えや意見を表現できるようになりました。
■早く身につけておけばよかったと思ったことはある?
龍:作品集の作り方は身につけておけばよかったですね。作り方さえ知っておけばもっと早くできたなと思います。自分の思っていたことを表現する技術というか、CADの扱い方とか、技術的な面は早く知っておきたかったというのはあります。
■ゲームで役立った知識はある?
龍:たくさんありますね。まずゲームの中で車を運転して、車がどういう構造になっているかを知ることができるのは大きくて。車をかっこよく見せる方法、カラーリングとか、ゲームで楽しみながら知ることができたのはすごいプラスだと思います。
それといろんなメーカー、膨大な数の車を知ることができたのは大きかったと思います。車の図鑑を立体で見れるのは大きかった。
GTはリバリーエディターがクルマの造形をすごい研究しやすくて、作品を作るときにゲームをずっと横で見て、メーカーの狙いとかも考えてました。背景で天気とか変えられるじゃないですか。あれで色合いの変化とか光の移り変わりとか研究してました。世界中の車が手軽に細かいところまで見れるのはGTくらいです。
ひとつの進路に固執せず、様々な可能性を視野に
■今後同じような進路を考えている人たちへメッセージ
龍:メーカーに入りたいという目標があったとしたら、そこに入るためには何をしたらいいか、箇条書きとかにして一つずつステップ作ってやっていく必要はあると思います。
メーカーにも多種多様な仕事はあるので、自分自身がどういう仕事が合っているのか知るためにもいろいろ調べて、仕事を見つけて目指していくっていうのが、自分にもメーカーにとっても良い方向になると思います。
■ゲームでの活動も継続する?
龍:そうですね。環境的要因で今年はどうなるかわからないですけど、今後も色々やっていきたいという思いはあります。
■実車レース業界は視野にある?
龍:マツ耐どこかのラウンドでは出ようという話はしてます。スーパー耐久とか目標としては消えてないので、プロがいる現場で走ってみたいというのはあります。ゲームも実車も両方やっていきたいです。
■福岡に来ることは少なくなりそう?
龍:年末年始とか長期休暇のときに帰るくらいですかね。
開発ドライバーという大目標を掲げつつも、常に様々な可能性を模索し続け、自動車業界への就職という夢のひとつを叶えた龍君。実車レース参加、eモータースポーツ界での活動等も継続するということで、今後の活躍も目が離せません!
福岡に来れる機会は少なくなりそうですが、eM福岡としてはクラブメンバーがいつでも帰ってこれる場所として活動継続できるよう精進したいと思います。